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土曜のコロンボ [CINEMA]

小学生の頃、毎週土曜の夜が
待ち遠しくて堪らなかった。
午後7時半のクイズ番組「連想ゲーム」の
ほんわかしたエンディングテーマ曲が
流れると、わくわくが止まらなくなる。
次の瞬間、午後8時に始まるのだ。
米国ドラマ「刑事コロンボ」が。

この時間で、
一週間のモヤモヤや疲れが
一気に吹き飛んだもの。

今、NHK-BSプレミアムで
毎週土曜の午後4時過ぎから
このコロンボの再放送が観れる。
ヨレヨレのレインコートがシンボル。
土曜だからこそ、どこか懐かしく、
そこはなとなく嬉しい。

記憶を辿れば、僕が観た初めての
海外ドラマシリーズは、
「ローハイド」でも「拳銃無宿」でもなく
「奥様は魔女」か、この「刑事コロンボ」。

次々に起こる殺人事件。
犯人は毎回、様々な業界の人。
医者、ワイン会社の社長、料理研究家、
往年の大女優、シンクタンクの社長、
オーケストラの指揮者、
小説の編集者、推理小説の作家等など。
小学生ながらに
いろいろな職業の人がいるものだと
興味津々でもあった。

このロサンゼルス警察の警部は、
ヨレヨレで皺だらけのコート姿、
オンボロに見える古い自家用車、
しなびた、安い葉巻
櫛を通していない髪型、
磨いていない茶色の靴が
トレードマーク。

コロンボのファンである三谷幸喜氏が
そのオマージュとして
「古畑任三郎」を書いたのは有名。
田村正和さん演じる古畑警部補は
黒づくしのファッションで、佇まいや
立ち居振る舞いに気品があったので、
コロンボとは趣きを異とする。
だけど、犯人へのアプローチには
コロンボと同様の、
観察力と緻密さ、粘りと閃きがあった。

コロンボアプローチは、
これぞホシだと睨んだ人物には
とぼけた雰囲気で近づき、
「うちのカミさんが貴方のファンでして」
「うちの甥っ子がね…」
コロンボの身内や犬の話など、
相手にとってどうでも良い話題を始める。
これに犯人はだんだん苛立ち、
コイツは大した刑事ではないと油断する。

でも時間の経過と共に
コロンボのちょっとした気づきに、
犯人は、「コイツ、侮り難し」と
焦り出すのだ。

思えばコロンボは、
所有する物を大切にした。
コートも靴も車も新調せずに
使い尽くしていた。
この姿勢には脱帽。

推理のアプローチも本質的で
基本中の基本をど真ん中に置いた。
人間の心理や、欲望の隠れ場所を辿る、
いろはの「い」を重んじていた。
この姿勢には感服。

言い過ぎかもしれないが
いわばSDGs精神の先駆者。
科学捜査などAIが進化するなか
人間の「考えるチカラ」の伝道師。

身近にあることへの洞察。
気付きである。
大切なのことは既に近くにある、
ヒントのカケラはすぐそこにあると。
人が生きていくうえでの最も大切な原点。

土曜の午後の、ヨレヨレ。
やはりコロンボは土曜に限る。
ワクワクのとき、心の靄が消え去る。
あのアプローチを両手で受け取るように、
今日も観る。


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