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面倒≦甲斐、珈琲ミルに謝罪した日 [Collection]

昨日土曜の朝、
僕は「ごめんね、ごめんね」と 
その珈琲ミルに声かけをして 
ハンドルをゆっくりまわした。 

面倒なことほど、大切なことが多い……。 

僕が電動の珈琲ミルを買ったのは 
去年の4月、緊急事態宣言の直前。 
それまでは手動式のミルで 
コツコツと豆を挽いていた。 

電動式はやはり便利。 
挽き加減も調整可能で、音も静か。 
この一年、何度使ったことだろう。 
大変重宝している。 

でも最近、とてつもなく、 
手動の、アナログのものに心引かれる。 
昨年の春、感染拡大下、 
ストレスフリーに、美味しい珈琲を淹れたい。
そんな気持ちで電動式を求めた。  

珈琲豆を挽くようになったのは 
いつ頃からだったろう。 
僕が中学生の頃だから、40年以上前、 
父が手動式ミルを買ってきて、 
僕はそのハンドル廻しを手伝った。 

ジリジリ、ゴロゴロ、ゴツゴツ、 
黒く硬い豆が砕ける音。 
あれは遠い日の、休日朝の定番の音。 

でも、それから数年後僕が高校生の頃には、
我が家は予め挽かれた粉を買うようになった。 
手動式ミルは食卓テーブルから姿を消した。

その6年後、僕は所帯を持ち、 
新婚生活で手動式ミルを買った。 
珈琲好きとしては、 
やはり豆を買い、挽きたてを淹れたい。 
父との想い出を引き継ぎたい。 
そんな憧憬もあった。 

でもやがて、手動式ミルは使わなくなり、 
どう処分したかも、30年近く前のことゆえ
判然としない。 
何故使わなくなったのか?答えは明快、
音が煩く、作業が面倒だからだ。 
20210515_104703.jpg
今から10年前、僕は20年ぶりに 
またも手動式ミルを買った。 
そして、大切に豆を挽いて 
丁寧に珈琲を淹れるようになった。 

そのきっかけは、近所の南蛮屋さんという、
珈琲豆店。店頭で試飲する珈琲の、 
その美味しさたるや、心が震える程。 
以来、珈琲を美味しく淹れることに 夢中に。

そして時は去年の4月に辿り着く。 
感染拡大下だからと、 
ストレスフリーを言い訳に、 
僕はまたぞろ、手動式を使わなくなった。 

そして、GWが終わり 何故か僕はとてつもなく 
手動式が恋しくなった。 
そして昨日、台所の片隅で埃をかぶっていた
手動式ミルをテーブルの中央に置いた。 
そして、丹念に掃除し磨き始めた。 

今朝、「ごめんね、ごめんね」と 
その手動式ミルに声をかけ、 
ゆっくりハンドルをまわした。 
「美味しくなれ、美味しくなれ」と
ペーパードリップで丁寧に淹れた。 

ジリジリ、ゴロゴロ、ゴツゴツは、 
もはや昭和の音ではない。 
休日朝の定番のリズムは長く引き継がれる。

これから先、きっと僕は、 
ミキサーのような音を出す 
電動のミルも使うだろう。 
平日は、さほどゆとりがなく、 
やはり実用性の高い機械は使う。 

でも僕はもう、こうしたアナログの機器を 
処分することはないということ。 

面倒なことほど、大切なことが多い。 

人はアナログ。育みたいのは心。 
込めたいのは真心。 

毎朝の僕のテーブルに 
映える1台のアナログ。 
こんなにも心が和むと覚えるのなら、 
他にもある幾多の小さな幸せに 
気付ける日はそう遠くはない。  


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